溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「す、すみません……。えっと……主任に頼まれた資料を探しにきて……。その、他言はしませんから……」
「え? あ、いや……今の話なら――」
「急いでるので失礼します」
声が震え、笑顔が強張る。
それでも、私は今見たことをなかったことにするかのように頭を下げ、小走りで奥へと向かった。
幸か不幸か、メモにあるファイルはすぐに見つかった。
脳芯にまで響きそうなくらい大きな鼓動を抑えるように深呼吸をして、恐る恐るドアの方へと戻る。
すると、穂積課長と田原さんはまだその場にいた。
ふたりの視線が私に注がれていることには気づかない振りをして、すれ違いざまにそれらしい会釈をする。
「り――」
「待って、智明!」
私の名前を呼ぼうとしたであろう声が遮られ、綺麗な声が耳をつんざく。
彼女の手が課長の腕に伸びたのが、視界の端に映ったけれど……。今はただ、なにもかもを見聞きしなかったことにするのが精一杯で、不安と困惑を振り切るように走って営業部へと戻った――。
「え? あ、いや……今の話なら――」
「急いでるので失礼します」
声が震え、笑顔が強張る。
それでも、私は今見たことをなかったことにするかのように頭を下げ、小走りで奥へと向かった。
幸か不幸か、メモにあるファイルはすぐに見つかった。
脳芯にまで響きそうなくらい大きな鼓動を抑えるように深呼吸をして、恐る恐るドアの方へと戻る。
すると、穂積課長と田原さんはまだその場にいた。
ふたりの視線が私に注がれていることには気づかない振りをして、すれ違いざまにそれらしい会釈をする。
「り――」
「待って、智明!」
私の名前を呼ぼうとしたであろう声が遮られ、綺麗な声が耳をつんざく。
彼女の手が課長の腕に伸びたのが、視界の端に映ったけれど……。今はただ、なにもかもを見聞きしなかったことにするのが精一杯で、不安と困惑を振り切るように走って営業部へと戻った――。