溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
翌々日は、あいにくの雨だった。
早朝から降り続ける雨は、どんよりとした私の気分を一層沈ませてしまう。


資料室でのことを思い出すと、情けないくらい簡単に涙が込み上げてくる。
どれだけ重いため息をついても、気持ちはちっとも軽くならなかった。


穂積課長と田原さんを見た日から今日まで、私は課長と会っていなかった。
理由は、私が逃げてしまっているから。


金曜日は、午後からも外出していた穂積課長と顔を合わせるタイミングがないまま、会社を後にした。
あの日に限って、社内で課長の顔を見られたのが資料室で鉢合わせたときだけだったなんて、あまりにも運が悪かったと思う。


しかも、穂積課長と顔を合わせる勇気がなくて、その夜は多恵に『泊めてほしい』と泣きついたのだ。
理由を話せなかった私のことを、彼女は温かく迎え入れてくれ、さらには今朝まで二泊もさせてくれた。


だけど、今日はデートの予定があると聞き、お礼を言って帰宅した。
多恵は心配してくれていたけれど、彼女のデートの邪魔をするわけにはいかなくて、無理に繕った笑顔で『大丈夫』と告げた。

< 311 / 380 >

この作品をシェア

pagetop