溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
『あなたは今後、うちの会社を背負うかもしれないのよ?』


あの言葉は、ただ仕事ができる人に対する言い方じゃなかったと思う。
一見すればそんな風に聞こえなくはなかったけれど、田原さんの口振りはもっと深刻そうだった。


穂積課長なら、今後もっと出世していっても不思議じゃない。
だけど、彼女が言っていたあの言葉は、たぶん〝そういう話〟じゃなかった。


真相なんて、本人に訊くしかない。
それはよくわかっているのに、課長に会えば振られてしまうような気がして、会うのが怖かった。


ベッドの中で丸まっている私の頭の中は、そんなことばかり考えている。
座ることすら億劫で、なんのやる気もないままに布団からモゾモゾと顔を出した私の視界に入ってきたのは、メンズブランドの紙袋と有名なショコラブランドの紙袋だった。


悲しいことに、一向に解決しない不安を抱えながら迎えた今日は、本当なら穂積課長とデートをしていたかもしれないバレンタインデーだ。
残念ながら、もう課長に渡せることはないかもしれないけれど……。

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