溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】

「俺の母は、シングルマザーだって話しただろ？」


初めて穂積課長の家に泊まった翌朝、課長は少しだけ自分の生い立ちを話してくれた。
そのとき、ご両親は幼少期に離婚し、シングルマザーのお母様が苦労して育ててくれたけれど、お父様とはずっと疎遠だったと聞いた。


「俺の父は、まぁ人間としては尊敬できるんだけど、父親や男としては最低の部類というか……。両親の離婚も、父が外に女を作って、その女性と籍を入れるために母に離婚を切り出したんだ」

「え……」

「しかも、その女性とも数年後に似たような理由で離婚して、今は長いこと独り身らしい」


情報処理が追いつかない私に、穂積課長が苦笑する。
「呆れるだろ」とため息をついた課長は、お父様にはまったくいい印象がないみたいだった。


ただ、穂積課長には悲観している様子や恨んでいる素振りはなく、あくまで淡々としている。
それでも、課長にどんな風に声をかければいいのかわからなかった。