溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「だから、俺はそんな母を尊敬してるし、感謝だってしてる。ただ、父にはあまり関心はなかった。恨んでるわけじゃないが、ほとんど記憶もないし、いまいち情が湧かないと言った方が正しいのかもしれない」


それは、きっと仕方がないこと。
穂積課長とお父様は幼少期に離れているし、それ以降はほとんど会うことはなく、連絡も取っていなかったのであれば、いくら血が繋がっていてもそうなってしまうこともあるだろう。


「冷たいかもしれないが、俺にとって父親は会う機会のない遠い親戚というくらいの位置づけで、この先も関わることなんてないと思ってた。でも……」


急に口を閉ざしてしまった課長は、眉間に深い皺を刻んだ。
複雑そうに、そして適切な言葉を探すように。


「去年の秋、母から『父が倒れた』と連絡があった。俺は名古屋にいたんだが、母に病院に行くように言われて、その足で都内の病院に行ったんだ」

「名古屋?」

「あのサンプルの件で行ったときだよ」


目を小さく見開いた私は、あのときの記憶を手繰り寄せる。
そういえば、私は金曜日だったあの日に穂積課長にメールを送ったけれど、課長からの返信はなかった。

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