溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「名古屋から病院に向かうとき、俺は正直ギリギリまで行くか迷ってた。父と最後に会ったのは小学生のときだったし、倒れたと聞いても動揺もしなかった。それくらい、父親だという感覚もなかった」


そう話した穂積課長は、「冷たいと思うか?」と小さく苦笑した。
私はすぐに首を横に振って否定し、言葉の代わりに笑みを浮かべる。


課長は、病院に行ったときのことを話してくれた。


ギリギリまで迷っていたものの、お母様からかかってきた二度目の電話で『私も病院にいる』と言われ、ひとまず駆けつけたこと。
どこか他人事のような気持ちのまま、病院の入口で待っていたお母様とともに病室に行ったこと。


「先に面会を済ませてた母に案内されたのは、特別室だった。幼少期に両親が離婚して以来、父とは数回しか会っていなかったし、父がどんな仕事をしてるのかも聞いたことがなかったから、こんなところに入院できるような人なのか……と少し驚いた」


穂積課長が、ため息をつく。
そして、課長は「まぁこのあともっと驚くんだけど」とどこか呆れたように笑った。

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