溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「俺も父もなにも知らない中、母だけは最初から全部知ってたんだ。さすがに、驚きを通り越して呆れたよ」


穂積課長は自嘲気味な笑みを零したけれど、きっとそのときは本当に驚いたに違いない。
ただ、今の課長の顔は、すべてを吹っ切ったように清々しい。


穂積課長が三歳の頃に両親が離婚して以来、母方の姓を名乗り、父親と最後に会ったのは十歳の頃。
それも、最後の面会ではほんの一時間お茶をしただけだというのだから、顔を覚えていなくても無理はないと思う。


「あれ……。でも、どうしてずっと会わなかったんですか?」

「あぁ、それは……。話してもいいが、呆れるなよ?」

「え?」

「俺の母と離婚したあとに再婚した女性と別れて、その次に別の女性と籍を入れるとき、その人が俺との面会をやめてほしいと言ったらしい」


要するに、再々婚をした相手の女性が社長の子どもを疎ましく思った……ということのようだ。
そして、社長はそれを受け入れることにし、養育費を一括で支払って、以降は課長と会うことはなくなった。

< 326 / 380 >

この作品をシェア

pagetop