溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】

こんなとき、田原さんならどうするんだろう。
少なくとも、私のように黙ったりせず、励ましたりサポートしたりするに違いない。


だけど、平凡すぎる私には激励の言葉なんて浮かばず、支えられるような度量もない。
穂積課長を支えたい気持ちはあるのに、私ではあまりにも力不足だし、事実上は御曹司である課長とはまったく釣り合わない。


別れたくなんて、ない……。でも……。


不意に過った思考に、息が苦しくなった。
穂積課長に抱きしめられたときは大丈夫だと思ったはずなのに、隣にいる課長が今はとても遠い。


「これまで以上に大変で、今までは触れてこなかった経営についても学ばなければいけないし、プライベートの時間はもっと削らなければいけないと思う。きっと、莉緒とも今まで以上に会えなくなる。だから――」


穂積課長の口から別れの言葉が紡がれる予感に、言葉では言い表せないほど大きな悲しみが胸を突き上げる。
思わず課長から視線を逸らし、無意識にこぶしをギュッと握っていた。