溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「一緒に住まないか？」


そっと鼓膜をくすぐったのは、緊張混じりの穏やかな声音。
息をするのも忘れていた私は、無意識に見つめていたラグから慌てて視線を上げる。


「わ……別れるんじゃ……」

「は？　どうしてそうなるんだよ？」


瞳いっぱいに涙を溜めた私に、穂積課長が困り顔で笑う。
その顔つきは、意味がわからない……と語っていた。


「だって……穂積課長は、御曹司で……すごい人で……。これから、もっと遠くなっちゃうかもって……」

「俺自身は御曹司の自覚なんてないし、これからたとえどんな道を歩くことになっても、俺は俺だよ」


上手く伝えられない私の気持ちを、課長が汲み取ってくれる。
柔らかく微笑む眼差しは、いつもと同じように優しかった。


「で、でも……私は、きっと……今よりもっと、課長と釣り合わなくなります……」

「ばか」


困り顔に浮かべられた笑みが、くしゃりと崩される。
まるで、愛おしいものを見つめるような柔和な双眸は、丸く穏やかだった。

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