溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「正直に申し上げると、わかりません」


深呼吸をしてから零した答えは、微かに震えていた。
無意識に握っていたこぶしの中は汗ばみ、ぎゅうっと力を込めていたせいで手のひらに爪が食い込んだ。


「でも……私は、智明さんと一緒にこれからの人生を歩んでいきたいと思っています」


緊張のせいか、やけに喉が渇く。
それでも、しっかりと言葉を紡ぐことができた。


「私はごく普通のどこにでもいるOLで、秀でた才能や特技なんてありません。ですが、智明さんが私と一緒にいることを望んでくれて、私も同じ気持ちでいます」


智明さんと過ごす日々は、穏やかな温もりをくれる。
小さなことでも喜びを分かち合い、日々の幸せを共有することができる。


だから、自分自身の未熟さを理解していても、彼と離れることは考えられない。
特別な取り柄なんてない私だけれど、ふたりで一緒にいるための努力なら怠るつもりはないから、まずはそれが少しでも伝わるようにしたい。

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