溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
本当は、あのときに素知らぬ顔をしていた智明さんに、ほんの少しだけ抗議するつもりだった。
だけど、喜ぶ彼を見ていると、そんなことはどうでもよくなってしまう。


「私の方こそ、智明さんには大切にしてもらってますから……。感謝の気持ちを伝えたいのは、私も同じです」

「莉緒……」

「だから、今思い出すと恥ずかしいですけど、あの場で少しでも気持ちを伝えられてよかったと思います」


喜びをあらわにした表情で頷いた智明さんは、私を見つめてそっと瞳を緩めた。
そんな彼を見て、やっぱりお母様にそっくりだなと思う。


「そういえば、お母様すごく美人でしたね」

「あぁ、あれは美人の類だろうな。今でもそれなりにモテるようだが、よりにもよって父と復縁するとは……。もっと、いい人がいるだろうに」

「でも、おふたりとも幸せそうでしたよ」


苦虫を噛み潰したような顔をした智明さんは、私の言葉に苦笑したけれど……。お母様が幸せなのは、彼が一番よくわかっているだろう。

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