溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「……おはようございます」

「おはよう」


ドアスコープを確認してから鍵とドアを開けると、穂積課長がニッコリと笑っていた。
その笑顔はよく見る表情だけれど、昨夜の課長の姿を見てしまったからには癒やされたりはしない。


「ちゃんと準備できてるみたいだな」

「上司をお待たせするわけにはいきませんから」

「その心づもりはいいけど、今日は彼氏だって言ってるだろ?」


牽制したつもりだったのに、軽くかわされてしまった。
あくまで昨夜の話は酔った勢いとかではないみたいだと悟り、まだ顔を合わせたばかりだというのになんだか気が重い。


「とりあえず行こうか」

「はい」


ため息混じりに外に出て戸締りをすると、穂積課長がアパートの前に停めてあった車のロックを解除したあと、「どうぞ」と言いながら助手席のドアを開けた。
ペコリと頭を下げて「失礼します」と断ってから乗り込むと、課長は助手席のドアを閉めて運転席に回った。

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