溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
穂積課長が運転する車に乗せてもらったのは、私が営業部に異動してきた時以来。
事務職だけれど『勉強のために』と、社用車で外回りをする時に一度だけ連れて行ってもらったことがあった。


その時から昨日まではただの上司と部下だったし、穂積課長に対して緊張感を抱いたりはしなかったけれど……。今日はプライベートだということや今の状況を考えると、緊張してしまって落ち着かなかった。


「あの……そういえば、どうしてうちの場所がわかったんですか?」


狭い車内で沈黙になるのが嫌で思い切って会話を切り出すと、視線をチラリと寄越されたあとで呆れたような顔をされた。
ため息が落とされ、空気が重くなったような気がする。


「昨日、アパートの前まで送っただろ」

「そうでした……」


昨夜はタクシーで送ってもらったことをすっかり忘れていて、マヌケな質問をしてしまった数秒前の自分自身を恨んだ。
最初からこんな状態なのに、これから一緒にご飯を食べるなんてますます気が重い。

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