溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「あんまり、ねぇ」
フッと笑われて、見透かされていることはわかったけれど、穂積課長から視線を逸らしてひとまず逃げる。
そのまま前を向けば、あいにく信号が赤になったところで。ブレーキを踏んだ課長に、じっと見られている気配がした。
「青山って、記憶力は悪くなかっただろ?」
「……別によくもないです」
「でも、悪くはない」
「課長、信号が変わりそうですよ」
「ちゃんと見てるから大丈夫」
話を逸らそうとしてみたけれど、すぐに跳ね除けられた。
穂積課長と言えば、癒し系の代名詞かと思えるくらい穏やかな人だったはずなのに、昨夜からの課長はとにかく別人過ぎて厄介だ。
「で、どこまで覚えてる?」
「だから、あんまり覚えてないです……」
信号が青に変わったからこの話を終わらせたかったけれど、強気な口調で紡ぐはずの言葉の語尾が小さくなっていった。
子どもの頃から嘘をつくのが下手な私は、こういう時に強く言い切れなくて困る。
フッと笑われて、見透かされていることはわかったけれど、穂積課長から視線を逸らしてひとまず逃げる。
そのまま前を向けば、あいにく信号が赤になったところで。ブレーキを踏んだ課長に、じっと見られている気配がした。
「青山って、記憶力は悪くなかっただろ?」
「……別によくもないです」
「でも、悪くはない」
「課長、信号が変わりそうですよ」
「ちゃんと見てるから大丈夫」
話を逸らそうとしてみたけれど、すぐに跳ね除けられた。
穂積課長と言えば、癒し系の代名詞かと思えるくらい穏やかな人だったはずなのに、昨夜からの課長はとにかく別人過ぎて厄介だ。
「で、どこまで覚えてる?」
「だから、あんまり覚えてないです……」
信号が青に変わったからこの話を終わらせたかったけれど、強気な口調で紡ぐはずの言葉の語尾が小さくなっていった。
子どもの頃から嘘をつくのが下手な私は、こういう時に強く言い切れなくて困る。