溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「別にいいけど」


返ってきた言葉に焦りはなくて、それどころか余裕すら見えた。
驚く私を余所に、運転を続ける穂積課長が口を開く。


「バラしたければ言えば? 昨日、青山にこのことを話した時点で、それくらいの覚悟はしてるから」

「なに言ってるんですか? 今までずっと癒し系の課長で通してきたんですよね?」

「癒し系かどうかは別にして、優しくて人当たりのいい人間としてやってきたつもりではあるな」

「じゃあ、どうしてあっさりそんなことが言えるんですか? 今まで築いてきたものがなくなるって思わないんですか?」

「思わない、って言えば嘘になる。でも、別に俺は仕事で手を抜いたことはないし、仕事中は誰に対しても誠実に接してきたつもりなんだよ」


それは、間違いないと思う。

課長はいつだって優しくて、たまに少し緩いところがあるように見えても誰に対しても誠実だ。
だからこそ、上司からも部下からも寄せられている信頼は厚い。

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