溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
サラダと一緒に目の前に置かれた鶏のレモンクリームスープからは、食欲をそそる香りと湯気が立っている。
その匂いに刺激されたお腹が、今にも鳴ってしまいそうだった。


お腹が鳴らないうちに食べようと、スプーンを持つ。
「いただきます」と声にして両手を合わせれば、穂積課長がフッと笑った。


「あの……」

「ん？」

「なんで笑うんですか？」

「なんでもない。気にするな」


一瞬の間のあとにピシャリと言い放たれ、笑顔も消されてしまった。
ニコニコされても断りづらくなりそうで困るけれど、だからと言って無表情になるのはやめてほしい。


「冷めないうちに食え」

「はい」


もちろんそんなことは言えなくて、再び手を合わせてからスープを掬った。
そのまま口に運ぶと、まろやかなクリームとさっぱりとしたレモンの風味が口腔に広がって、思わず目を見開いていた。


「美味しい……！　すごく美味しい……」


感嘆の声音で言い直してしまうくらい美味しくて、すぐに二口目を食べた。
絶妙な塩梅のスープに、手が止まらなくなりそうだった。

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