溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】

「あぁ、安心しろ。今日はなにもしないから」


とりあえず落ち着こうと水を飲んだところでそんな風に言われて、噴き出してしまいそうになった。
なんとか大丈夫だったけれど、こういうタイミングで変なことを言わないでほしい。


穂積課長はそんな私の心情を見透かしていたようで、喉の奥で笑いを噛み締めるようにしていた。
なんだか腹が立つのに、課長の楽しそうな顔を見ていると怒る気にはなれない私がいて、ますますどうすればいいのかわからなくなる。


「あの……そういうこと、言わないでください……。誰かに聞かれてたらどうするんですか？」

「誰も聞いてないだろ。それに、そこまで他人の会話なんて気にしないと思うけど」


両隣のテーブルは空いているけれど、少し離れたテーブルには女性客や恋人同士のお客さんがいる。
もし誰かに聞かれていたら、と考えると、気持ちが落ち着かなかった。


「それに、緊張しなくてもいいけど、意識はしてもらいたいからな」


さらに追い討ちをかけるように言われて、その意味を理解して鼓動が速くなった。
ドキドキしているなんて、知られたくない。