極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
「バッ、バカにしないでください! そんなことくらいっ……!」


言いながら手首に力を入れると、それよりも強い力で押さえ込まれる。


「……それでいい。お前はそうやって、最後まで抵抗してろ」


まるで愛おしいものを見る時のようにゆるりと緩められた瞳に、思わず胸の奥が高鳴ってしまった。


だけど──。

「全部俺のせいにしていいから、とりあえず今は俺に抱かれとけよ」

続けて落とされた声にはほんの少しだけ切なさを孕んでいたような気がして、今度は胸の奥がギュッと締めつけられる。


篠原のひとつひとつの言動に振り回される胸が、なんだかやけに苦しかった。


ダメだ……。


そのことに気づくのが、あまりにも遅過ぎた。


そうして諦めを見せ始めた私は、とっくに篠原の手の中で操られていたのかもしれない。そんな私を余所に、彼がまた生チョコを掴み、その指先に力を加えた。


グニャリと歪む、ダークブラウン。
クスリと笑った篠原の指先で形を変えたチョコが、私の首筋にゆっくりと擦りつけられる。


「……っ!」


手首から広がる熱に、体が完全に侵食されてしまう寸前──。

「ドロドロに溶けてしまえよ」

耳元で低く甘く囁いた彼から、再びキスを落とされた。

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