極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
編集長から、『なにがあっても篠原櫂の機嫌を損ねるな』と言われているから。
このまま大人しくしていれば、今日こそは原稿をもらえるかもしれないから。


唇に与えられる篠原からのキスを受け入れながら、頭の中では思いつく限りの言い訳を並べていた。そんな私から唇を離した彼が、不服そうに眉を寄せる。


「……他のこと考えるなんて、随分と余裕があるんだな?」


言い終わるよりも早く、今度は首筋に埋められた唇。


さっきチョコを擦りつけられた場所を、ペロリと舐められて……。思わず体を強張らせながら、小さな吐息を漏らしてしまった。


「へぇ」


どこか満足げな声が首筋で漏らされ、吐息が当たる。


そんな些細なことにまで反応する、熱を帯びた体。
普段の私からは考えられないほどの反応に戸惑って、同時に恥ずかしさが込み上げた。


「そんな顔もするんだな」


いつの間にか至近距離で私を見下ろしていた篠原が、お互いの鼻先をピタリとくっつけた。


「いい顔だ」


喉の奥でクッと笑う彼に、胸の奥が甘く軋む。


「普段は眉間にシワ寄せてるお前しか見てないから、瞳に涙を溜めて顔を真っ赤にしてるお前って新鮮だな」


また、綺麗な瞳がゆるりと緩められた。

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