極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
Chocolat,01 少しだけ変わった日常
カタカタと鳴るタイピング音と、淹れたばかりのコーヒーの香り。それらに包まれた部屋には、相変わらず綺麗な顔をした男の姿。
「おい、塚本」
「はい」
「あっちに行ってろ」
「え……」
「お前がいると気が散る」
パソコンに視線を遣ったまま、淡々と告げられた指示。夕食の支度をしていた私に『書斎に来い』と言ったのは、自分のくせに……。
「……わかりました」
思わず漏れたため息を隠さず、書斎に落とす。
絶大な人気を誇る小説家、篠原櫂はやっぱり今日も暴君だ。
相変わらず傍若無人な篠原に呆れつつ、キッチンに戻る。そこは微塵切りの途中だった玉ねぎの香りが充満していて、眉を小さく寄せてしまった。
「相変わらず、自己中だわ……」
電話中だろうと、微塵切りの途中だろうと、指示が入ればそれらを後回しにして従う。どんなに理不尽でも、彼のワガママを聞くのが私の役目。
さっきは『コーヒーを淹れろ』と言いにきた篠原に頷いて、淹れたばかりのコーヒーを書斎に持って行ったところ、『ここにいろ』と言われた。
それなのに……彼は気が変わってしまったのか、五分もしないうちにあんなことを言い出したのだ。
「おい、塚本」
「はい」
「あっちに行ってろ」
「え……」
「お前がいると気が散る」
パソコンに視線を遣ったまま、淡々と告げられた指示。夕食の支度をしていた私に『書斎に来い』と言ったのは、自分のくせに……。
「……わかりました」
思わず漏れたため息を隠さず、書斎に落とす。
絶大な人気を誇る小説家、篠原櫂はやっぱり今日も暴君だ。
相変わらず傍若無人な篠原に呆れつつ、キッチンに戻る。そこは微塵切りの途中だった玉ねぎの香りが充満していて、眉を小さく寄せてしまった。
「相変わらず、自己中だわ……」
電話中だろうと、微塵切りの途中だろうと、指示が入ればそれらを後回しにして従う。どんなに理不尽でも、彼のワガママを聞くのが私の役目。
さっきは『コーヒーを淹れろ』と言いにきた篠原に頷いて、淹れたばかりのコーヒーを書斎に持って行ったところ、『ここにいろ』と言われた。
それなのに……彼は気が変わってしまったのか、五分もしないうちにあんなことを言い出したのだ。