極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
「ありがとうございます」
受け取った茶封筒の中には、校正が入った原稿に篠原がさらに修正を加えたもの。
原稿用紙をパラパラと捲って確認し、封筒に戻した。
「これは、おまけだ」
「え?」
座ったままの彼が茶封筒の上に本を乗せたから、私の手に書籍一冊分の重みが加わる。
「これっ……!」
「発売日は明日だからな、解禁だ」
本のタイトルに目を見開いて篠原を見ると、彼は意味深な笑みを浮かべていた。
【失恋ショコラ】
表紙にそう書かれたそれは、私が読みたくて読みたくて堪らなかった作品。
どういうわけなのか、篠原の指示によって私だけはずっと【失恋ショコラ】の原稿を見ることが許されなかった。それが執筆の条件だと言われた時には、理由がわからないことから彼や編集長に食い下がった。
だけど……所詮、私は社会人三年目の“ひよっこ”。
いくら篠原の担当者だろうと、人気作家の彼が『塚本に原稿を見せるな』と言うのなら、そうなってしまうのだ。
最初は理由がわからず、篠原の機嫌を損ねたのかと不安にもなったけれど……。心配するようなことは、なにひとつないらしい。
そして、篠原や編集長、さらには以前まで彼の担当者だった先輩からも諭され、結局は仕方なく彼に言われた通りにしていた。
受け取った茶封筒の中には、校正が入った原稿に篠原がさらに修正を加えたもの。
原稿用紙をパラパラと捲って確認し、封筒に戻した。
「これは、おまけだ」
「え?」
座ったままの彼が茶封筒の上に本を乗せたから、私の手に書籍一冊分の重みが加わる。
「これっ……!」
「発売日は明日だからな、解禁だ」
本のタイトルに目を見開いて篠原を見ると、彼は意味深な笑みを浮かべていた。
【失恋ショコラ】
表紙にそう書かれたそれは、私が読みたくて読みたくて堪らなかった作品。
どういうわけなのか、篠原の指示によって私だけはずっと【失恋ショコラ】の原稿を見ることが許されなかった。それが執筆の条件だと言われた時には、理由がわからないことから彼や編集長に食い下がった。
だけど……所詮、私は社会人三年目の“ひよっこ”。
いくら篠原の担当者だろうと、人気作家の彼が『塚本に原稿を見せるな』と言うのなら、そうなってしまうのだ。
最初は理由がわからず、篠原の機嫌を損ねたのかと不安にもなったけれど……。心配するようなことは、なにひとつないらしい。
そして、篠原や編集長、さらには以前まで彼の担当者だった先輩からも諭され、結局は仕方なく彼に言われた通りにしていた。