極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
「お──」
「すみません、これでも精一杯早く来たんですけど」
恐らく『遅い』と言いたかったのであろう篠原を遮って、無表情のまま淡々と告げた。その声は低くて、自分からこんなトーンが出るのかと驚いてしまう。
だけど、そんな素振りは微塵も見せないように彼に視線を遣ると、綺麗な瞳を細めて眉を寄せていた。
「……どういう表情だよ、それは」
どこか困惑気味に落とされた言葉から逃げるように、視線を逸らす。
「まぁいい。とりあえず入れ」
いつもよりも優しい口調の篠原を気味悪く思いつつ、小さなため息を漏らしながら足を踏み入れた。
珍しく自らコーヒーを淹れてくれた彼は、やっぱりどこか気味が悪くて、カップに手を伸ばすことができない。
「……で?」
そんな私を余所に、催促混じりの一文字が飛んできた。
篠原は、私になにを言わせたいのだろう。
私は、彼の望む言葉なんて返せないのに……。
「感想は?」
再び篠原から飛んできたのは、やっぱり私の所感を求める言葉だった。
「おい」
思わず口をつきそうだった言葉を飲み込み、代わりに用意していたものを声にする。
「素晴らしい作品だと思います」
その直後、彼が眉をグッと寄せた。
「すみません、これでも精一杯早く来たんですけど」
恐らく『遅い』と言いたかったのであろう篠原を遮って、無表情のまま淡々と告げた。その声は低くて、自分からこんなトーンが出るのかと驚いてしまう。
だけど、そんな素振りは微塵も見せないように彼に視線を遣ると、綺麗な瞳を細めて眉を寄せていた。
「……どういう表情だよ、それは」
どこか困惑気味に落とされた言葉から逃げるように、視線を逸らす。
「まぁいい。とりあえず入れ」
いつもよりも優しい口調の篠原を気味悪く思いつつ、小さなため息を漏らしながら足を踏み入れた。
珍しく自らコーヒーを淹れてくれた彼は、やっぱりどこか気味が悪くて、カップに手を伸ばすことができない。
「……で?」
そんな私を余所に、催促混じりの一文字が飛んできた。
篠原は、私になにを言わせたいのだろう。
私は、彼の望む言葉なんて返せないのに……。
「感想は?」
再び篠原から飛んできたのは、やっぱり私の所感を求める言葉だった。
「おい」
思わず口をつきそうだった言葉を飲み込み、代わりに用意していたものを声にする。
「素晴らしい作品だと思います」
その直後、彼が眉をグッと寄せた。