極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜

Chocolat,04 あの夜と同じ妖艶な瞳

今年ももうすぐ終わりを迎えようとしている中、街はどこか浮足立っている。


今日は、クリスマスイヴ。
クリスマスカラーに彩られた街並みは微笑ましいけれど、私の心はなぜか二週間前からずっと曇ったままなのだ。


【失恋ショコラ】の発売日から、今日でちょうど二週間。
つまり、私が篠原に食ってかかったあの日からも、同じだけの時間が経っていた。


【失恋ショコラ】の売れ行きはもちろん好調で、私は以前と変わらず彼の担当者だけれど……。私たちを取り巻く雰囲気は、明らかに変わってしまった。


あの日から、私たちは事務的な会話しか交わさなくなってしまったのだ。


あのやり取りの数日後、気まずさを抱えたまま篠原の家に行けば、彼はいつものようにあたしをからかうことは疎か、必要以上の言葉を発することもなかった。


そのうえ、まるでお手伝いさんのように作ることが暗黙の了解になっていた食事の支度も、『もういい』と断ってきたのだ。


“不機嫌”とは、どこか違う。


だけど、この二週間の篠原は、無表情そのもので感情がまったく読めない。
さらには事務的な会話しか振ってこなくて、それまでとは違うのはどう見ても明らかなのだ。


その証拠に、あんなにも暴君だった彼は、自由気ままに振る舞っていたのが嘘のように、今や担当者である私を困らせることもない。

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