極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜

Chocolat,05 不器用な関係に終止符

この状況をどう判断すればいいのか、まったくわからない。
さっきからドキドキと騒ぐ胸に戸惑いながら、そんな場合じゃない、と自分自身を叱責する。


「……どいてください」


発した声が意外としっかりしていたのは、この状況が二度目だからだろうか。


「さっきの話、聞いてなかったのか? お前は今から俺に抱かれるんだよ」

「バカなこと言わないでください。先生には、恋人がいらっしゃるんでしょう?」


眉を寄せて訊けば、篠原は大きなため息を零した。


「バカはどっちだよ……」


険悪だった雰囲気を、どこか呆れたような表情の彼が和らげたような気がした。
だけど、篠原の表情から彼の真意は読み取れなくて、いつもの冗談かとも思ってしまう。


「また、私をからかうんですか?」


もしそうなら、本当にうんざりだ。


「こうすれば、私が狼狽えると思ったんですか? 悪戯にしてはひど過ぎ……」

「俺は至って本気だけど」


真っ直ぐな視線から、目を逸らせなくなる。
恋人がいるくせにこれが本気だと言うのなら、もっとタチが悪い。


「……からかわないでください。体だけの関係が必要なら、他の人を当たってください」


篠原に負けないように真っ直ぐな視線を向ければ、彼が眉をグッと寄せた。

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