極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
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ぼんやりとした視界に、朝の目覚めを予想する。
「……っ、痛……」
白濁したような世界から目を覚ました私は、怠い体を動かそうとしたところで軋むような痛みに見舞われて、意図せずに力が抜けてしまった。
「やっと起きたか」
「あ……」
背後から聞こえてきた声に顔を向ければ、ベッドに背中を預けている篠原が私を見ていた。
本がパタンと閉じられた直後、ベッドが彼の体重の分だけ軋む。
「……あれくらいでへばるなよ」
不満げな顔で私の体を跨いだ篠原に、とてつもなく嫌な予感が過ぎる。
「先生……、あの……」
「龍司だ、って言ってるだろ」
彼が「学習しろ」と眉をグッと寄せたから、ますます身の危険を感じて身構える。
「あの、龍司さん……」
「なんだよ?」
「どいてください」
未だに不満そうなままの顔に恐る恐る訴えれば、綺麗な瞳がスッと細められた。
「はぁ? なに言ってるんだ?」
「ですから、どい──」
「ふざけるな。こっちは満足してないんだよ」
「ちょっ……⁉︎」
言い終わるよりも早く私の首筋に唇が落とされたから、慌てて両手で力いっぱい篠原の胸元を押し返す。
すると、彼が舌打ちをした。