極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜

Chocolat,02 媚薬よりタチの悪い恋

休暇明けの今日は、体の節々が痛くて堪らなかった。


昨夜、終電を逃さなかったのは幸いだったけれど、執念深さすら感じる篠原の体力はいったいどこから来ているのだろう。
小説家なら体力なんてなさそうなものなのに、彼の運動量は尋常ではないような気がする。


もっとも、私はベッドの上でのことしか知らないのだけれど……。


「塚本」

「はい」


ため息をつきそうになった時、会議を終えて戻ってきた編集長に呼ばれた。


「お前、今度のパーティーの件はどうなった?」


嫌な予感を抱きながら彼のもとに行くと、予想通り痛いところを突かれてしまった。


「今、交渉しています」


笑顔を繕った私に、編集長が眉をしかめる。


「おいおい、大丈夫か? 原作者の来ないパーティーなんて、ありえないからな」

「わかっています」

「なんとしてでも篠原先生を説得して、パーティーに出席させてくれよ。先生もお前の言うことなら聞くだろうから」

「……そうだといいんですが」

「お前は先生のお気に入りだろう。なんせ、こんなに担当が代わらなかったのは、お前が初めてなんだから」


篠原と付き合っていることは誰にも話していないから、編集長の言葉に深い意味はないはず。
そうであることを願い、ニッコリと笑った。

< 84 / 134 >

この作品をシェア

pagetop