君がくれた明日は、七色の光を描いている
「そうでもないよ。あの人、私のことは特に興味がないから」


智也の大切な物は、私だけじゃない。


「嫉妬なんて全然しない人だよ? 私がどこでどうしていようと、関係ないんじゃないかな」


わざわざそう付け足したのは、彼氏とうまくいっていない事実を、朝陽くんにそれとなく伝えるため。


「……そっか」


朝陽くんは複雑そうな表情で、視線を下へ向けた。


「紗矢花、落ちてるよ」

「あ。ごめん」


知らないうちに落としたらしい布製のペンケースを、素早く拾い上げてくれた彼の指が、軽く私の手にぶつかって。

そんな些細なことが嬉しいと感じる私は、まだ彼のことを忘れられていないらしい――。



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