君がくれた明日は、七色の光を描いている
「なんでもない。木に引っ掛けて破いたの」
本当のことを言ってもよかったけれど。
今は黙っておくことにした。
「ふーん……そういえば、話があるって言ってたよな」
首の後ろを掻いて、思い出したように智也は言う。
「うん。あのね……」
言い出しづらそうな雰囲気を作り、短く告げた。
「私、智也と――別れたいの」
遠くのマンションの屋上から、カラスの群れが一斉に飛び立つのが見えた。
「――理由は?」
ショックな顔ひとつせず、智也は薬指でそっと自分のくちびるに触れる。
「好きな人が、できたから」
私は膝の上に両手を置いて顔色をうかがった。
でも、期待に反して彼の瞳には何の動揺もない。
「好きな男ってあいつだろ。双子の。おとなしいほう」