君がくれた明日は、七色の光を描いている
それはまるで“聞きたくない”という拒絶にも思えて。
その先を続ける勇気を失い、口を閉ざした。
さっきまで泣いていた私の涙腺は簡単に緩み、熱くなった目の縁から涙が溢れそうになる。
零れないように我慢してくちびるを引き結んでいると、
「また泣いてるし」
ありえない距離――頭のすぐ上から朝陽くんの静かな声がした。
視界を黒い学生服に遮られ、私は彼の腕に抱きしめられていた。
「泣き虫だよな、紗矢花は」
彼の体から伝わってくる温もりが信じられず、息も瞬きも忘れてしまう。
子どもをあやすように背中を撫でる手が優しい。
「朝陽、くん……?」
時折、抱きしめる力が強くなり、私の体中に安心感が生まれる。
瞳に浮かぶ涙の種類が、切ないものから温かいものへ変わっていった気がした。
廊下の向こうから、男子たちの騒ぐ声が聞こえてきて。
我に返った私は、朝陽くんの胸を押して腕の中から抜け出した。
それでもまだ、左手は繋がれたままだった。