君がくれた明日は、七色の光を描いている

それはまるで“聞きたくない”という拒絶にも思えて。

その先を続ける勇気を失い、口を閉ざした。


さっきまで泣いていた私の涙腺は簡単に緩み、熱くなった目の縁から涙が溢れそうになる。


零れないように我慢してくちびるを引き結んでいると、

「また泣いてるし」

ありえない距離――頭のすぐ上から朝陽くんの静かな声がした。


視界を黒い学生服に遮られ、私は彼の腕に抱きしめられていた。


「泣き虫だよな、紗矢花は」


彼の体から伝わってくる温もりが信じられず、息も瞬きも忘れてしまう。

子どもをあやすように背中を撫でる手が優しい。


「朝陽、くん……?」


時折、抱きしめる力が強くなり、私の体中に安心感が生まれる。

瞳に浮かぶ涙の種類が、切ないものから温かいものへ変わっていった気がした。



廊下の向こうから、男子たちの騒ぐ声が聞こえてきて。

我に返った私は、朝陽くんの胸を押して腕の中から抜け出した。

それでもまだ、左手は繋がれたままだった。
< 38 / 40 >

この作品をシェア

pagetop