君がくれた明日は、七色の光を描いている
学校に着き、学年の違う私たちは、いつもなら3年の教室がある2階で別れるはずだった。
「紗矢花、こっちに来いよ」
けれど智也が私の手を引いて、用のない4階まで上り出す。
「どうしたの? 智也」
4階を過ぎ、屋上へ通じる階段を上り切ったドアの前。
彼は突然私を抱きしめた。
ちょうど死角になっているせいで、下からは私たちの姿は見えない。
「少しでいいから充電させて」
「……いいよ」
断る理由もなく、彼に身を預けた。
智也の腕に抱きしめられているとき。
密かに、智也ではない別の人を想う。
どこか寂しそうに微笑むあの人を──。
ひどい女だと自分でも思う。
罪悪感はあるけれど、お互いさま。
智也は私の名前を呼び間違えたことだってあるのだから。
智也の肩越しに見える窓の外。
灰色に染まる空にあの人を思い浮かべ。
ただこのときだけは、“彼”の腕に抱きしめられる夢を見る……。