あなたが居なくなった日。
あ、面倒くさい。
とは思うものの流石にそれは口に出せない。
「だってそこは尊敬してるもん。
ここだけの話、お昼の放送で聴いて惚れたもん」
「あれ?それってこの前の?」
「うん」
「その前のはどうして惚れてもらえなかったんだろう?」
新田くんの言う“その前”。
それは恐らく五月の演奏会のことを指してるのだろう。
「あー。あのね?
あの時は自分の事でいっぱいいっぱいで他の人の音なんて少しも入ってこなかったんだ」