あなたが居なくなった日。
第七章 生まれた音色。
新田くんに会えないまま、カレンダーは早くも一月を終え二月を迎えていた。
「新田くん、本当にどうしたんだろうね?」
二月の一週目。
その最後の金曜日に、楓は久しぶりにその名を口にした。
楓は優しい子だ。
私が新田くんに会えずに気を揉んでいる事に気づいている。
だから、敢えて新田くんの名前を口にしなくなった。
私に『昨日は会えた?』と聞く事をしなくなっていた。
そんな楓が、それでも新田くんの名前を口にしたのには訳がある。
ついに目の前まで迫っているのだ。