旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「さすがに女性経験がないはずがないと思うけど、成暁くんの彼女なんて一度も見聞きしてないわよ」

 相槌を打ちながら箸を進めていた長谷川さんが口を開く。

「俺は一時期、あいつはゲイだと本気で思ってた」

 そんな誤解を生むくらい女っ気がなかったんだ……。

「そうそう。相手は遼平くんだって噂も立ってたし」

「はあ!? なんだよそれ!? 俺以上に女好きな人間そういないぜ!?」

 長谷川さん、それはそれでどうなの。

 高校時代のあらぬ噂を今初めて知った長谷川さんは、嘆きながらビールを煽った。

 そっか。だから私たちがご飯に行ったと聞いて、ふたりはあんなに驚いていたのか。

 佳奈さんが首を傾げて聞く。

「不安?」

 不安といえば不安だけど、私は一体なにに対して不安を抱いているのだろう。

 別に彼の女性関係を心配しているわけでもないし、私へ向けられる気持ちも嘘だとは思っていない。

 でもやっぱり、身分不相応なのではないか。それに……。

「宝来部長といると、ペースが乱されるんです。心の中を覗かれているみたいで落ち着かないし」

「それって、成暁くんが香澄のことを理解しているってことでしょ。あんなイケメンに好意を持たれても胡散臭いかもしれないけど、信用していいと思う」

 好意って……佳奈さんからもそう見えているってこと?
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