旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「香澄」

 私が抱いている不安を全て吸い取るかのように、成暁さんが唇をさらう。

「んっ……」

 堪えきれなかった声がこぼれると、成暁さんの息遣いが荒々しくなった。

 どうしてこんなに私を欲してくれるのだろう。私、全然魅力的じゃないのに。

「集中して」

 唇をくっつけたまま低い声で囁かれて、身体の奥の方がぎゅっと締めつけられる。

 集中って……。成暁さんのことしか考えていないのに。

 長い時間重なっていた唇が離れると、身体がもっとキスしてほしいとうずく。

 ……困った。思っていた以上に、私はこの人のことが好きだ。

「キスをしたところで、心にまでは触れられないのかな」

 言われたことがすぐに呑み込めなくて、ドキドキと鳴る心臓の音に耳を澄ませながら考えた。

 とっくに気持ちは伝わっていたと思っていたけど、もしかして、気づいていない?
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