旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
香澄の持っている小さなキャリーバッグに視線を移す。
「手ぶらでっいいって言ったのに。必要なものがあれば現地で用意すると伝えたよな?」
「ごめんなさい。貧乏性で……。でも、そうですよね。こんな荷物があったら行動しづらいのに……」
これから向かう場所は、四季折々の花々が咲き誇るテーマパークで、この時期は夜になると広大な敷地にイルミネーションを展開している。
デートを楽しんだ後ホテルに移動する予定だったので、香澄の言うように荷物があると邪魔になる。だが、そこまで気に揉むことでもない。
反省というより怯えた表情を浮かべて縮こまる彼女の頭にそっと手を置く。
「香澄の負担を減らしたくて言っただけだから、そこまで気にしなくていい。荷物は預ければいいし」
出来る限り優しく言うと、香澄は「すみません」と、安堵の息を漏らした。
彼女のこういうところが放っておけないのだ。
「行くか」
左手で香澄の手を握り、右手にキャリーバッグを持つ。
「あのっ、手を繋いだら歩きにくくないですか?」
「香澄の手を離すくらいなら、この場に荷物を置いていく」
考えをそのまま伝えると、香澄は一瞬にして顔を真っ赤にさせた。
あー……可愛い。
顔がにやけそうになるのを必死で堪え、目的地へと足を向けた。