旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
絵付師は私以外にもたくさんいる。私より勤務年数も長い先輩方もいる。
それなのにどうして。
私と佳奈さんの直属の上司である、四十代前半のふっくらとして親しみやすさのある男性工場長の話によると、宝来部長自ら私と佳奈さんを名指ししてきたらしい。
佳奈さんは分かる。勤続八年になるし、断ってしまったけど去年は花形でもあるデザイン部署へ来ないかと打診も受けていた。実力があり、信頼も置ける。
そしてこの美貌だ。さぞかしテレビ映えすることだろう。
小振りな輪郭に大きなパーツが合わさり、キリッとした印象の強さがある。可愛いよりも綺麗という言葉が適切な彼女に、同じ女性としてとても憧れている。
でも、私は……?
二十五歳にもなるのに一向に色気が出ない。丸顔の童顔で、垂れた目元が特徴的なため、動物に例えるならタヌキ一択だと同僚たちから言われる始末。百六十センチに満たない身長も、五十キロ辺りを行ったり来たりしている体重も、日本人の平均ど真ん中という平凡さ。
セミロングの髪は栗色に染めてはいるけれど、佳奈さんみたいに可愛いアレンジが出来るわけでもなく、仕事の日はいつもひとつに纏めている。