旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
今日は本社に赴くということで、秋らしい七分袖のオレンジトップスに紺色の膝丈スカートという出で立ちだが、普段仕事をしている時はゆったりとしたパンツにTシャツとパーカーを合わせた、動きやすさを重視した服装だ。
佳奈さんも似たような服装ではあるけれど、仕事が終わればきちんとした服に着替えて帰宅している。私は着替えても大して変わらないし、そもそも着替えない。
こんな私が宝来陶苑の看板を背負って、全国のお茶の間に姿を晒していいの?
この期に及んでも納得のいく理由を見つけられないまま全員の自己紹介が終わり、続いて宝来部長の口から企画の説明がなされた。
しかし普段から閉塞的な工房で黙々と絵付けをしている私には、難しい話をされても頭に入ってこない。
戸惑いを隠せず、隣に座る佳奈さんを横目で見る。すると、私の視線に気づいた佳奈さんが肩をすくめた。
それは、「私にも分からない」と言っているようだった。ちょっとだけ安堵した私は、長い時間張り詰めていた緊張を解く。
小さく息をついて、耳触りの良い、よく通る宝来部長の声に耳を傾けた。