旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
そもそも最初から結婚をするつもりでこのお見合いに挑んだのだから、彼に惹かれてしまって困るとか、そんな乙女心など気にする必要などない。
すうっと息を吸い込んで、まとまらない感情を一度全て捨てた。
真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれているのだから、私もきちんと応えないと。
「こちらこそよろしくお願いします」
深々と頭を下げる。なにも聞こえないので、不思議に思って顔を上げた。すると、はっとした宝来部長が微笑んで「ありがとう」と言う。
その瞳が微かに揺れているのを見て、また胸がきゅっと鳴った。
天然でこれだとしたら、ずるい人だなと思う。
「それじゃあ、正式に交際をするということで」
「あ、待ってください」
宝来部長の声を遮って、握られたままだった手に力を込める。