旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
会議が終わり、「最後まで残ってね」と佳奈さんに耳打ちをされる。
後片付けでもするのかと思い、宝来部長に続いて役職者たちが退席するのを見送った。
つ、疲れた……。
「あの、佳奈さ――」
「吉岡さん、これからよろしくね」
佳奈さんに話しかけようとしたところで、何故か最後まで残っていた、私の正面に座る男性がにこやかに声をかけてきた。
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
答えながら、頭をフル回転させる。
営業部の人だよね。えっと……名前は確か、長谷川(はせがわ)さんだったかな……。
奥二重で切れ長の目はどこか気怠さが漂っていて妙な色気がある。その反面、染めた様子のない黒色の短髪は清潔感に溢れていて、不思議な魅力がある人だと思った。
「吉岡さんって、入社してから彼氏も作らず、仕事一筋って本当?」
あまりの突然のことに言葉を失う。
……なんなのこの人。
少年のように爛々と輝かせた瞳からは微塵も悪気を感じない。だからこそ余計に、この未知なる男性にどう対応していいのか戸惑ってしまう。