旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
懇親会が中盤に差しかかった頃、成暁さんの元へ人が押し寄せて代わるがわるお酌をする。成暁さんは誰に対しても柔らかな笑顔を見せ続けている。
この人が意地悪な顔をしたり、子供っぽい態度を見せたりするところを、皆は知らないんだよね。
私を口説き落とそうとした男の顔は、佳奈さんや長谷川さんさえ知らないはず。
秘密を共有することが、いけないことをしているみたいでドキドキする。
どうか、この胸の高鳴りに気づかれませんように。
結局私はろくに席を移動することもなく、三人以外とはまともに会話をしないままお開きになった。
店の外へ出ると、冷たい夜風に吹かれて身体をぶるっと震わす。
「送っていくよ」
さっきまで他の人と喋っていた成暁さんが、いつの間にか隣に立っている。
「いえ、お気になさらないでください。タクシーの運転手さんが無事に送り届けてくれますので」
失礼にならぬよう出来る限り柔らかな口調で伝えると、身を屈めた成暁さんが顔を寄せてきた。