旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「香澄とふたりきりになりたいんだ。分かって」

 周りの誰にも聞かれぬよう、色っぽく囁く。

 耳元に彼の体温を感じて胸がドキッと高鳴った。

 すぐそばに佳奈さんもいるのにやめてよ!

 どこにもぶつけられない感情を沸騰させているうちに、成暁さんはタクシーを止めて、強引に私の身体を車内に押し込んだ。

 一連の動作の華麗さに、私なんかが言葉を挟む余地なんてなく。

「近所なので彼女のことは私が送っていきます」

 さらりと皆に告げ、私が口を開く前にドアは閉まる。

「私まだ皆に挨拶してないのに……」

「そんなの気にするな。皆酔っているし、誰が誰に挨拶したとかまともに覚えていないだろう」

 そんなことはないと思うのだけど。

 成暁さんが行き先を告げると、タクシーは夜の街を走りだした。

 そもそも運転手のおじさんがいるのだからふたりきりではない。
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