旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「えーっと……それでは、また会社で」

 ドアノブに手をかけ、そそくさと外へ出る。するとすぐに成暁さんも車を降りた。

「どうしたんですか?」

 まさか玄関まで送るつもり?

 困惑して一歩後ずさりしたところで、右腕を掴まれてぐいっと引っ張られた。

「わっ」

 バランスを崩した私は、勢いよく成暁さんの胸に飛び込む。

 頬にスーツの感触を感じたと同時に、彼の手が後頭部に回り、角度を無理やり変えられた私の唇に温かいものが触れた。

「んっ……」

 息ができなくて、苦しさからうめき声に似たものがこぼれる。

 胸がぎゅうっと強く締めつけられて痛くなる。ドクンドクンと心臓が激しく鳴っている。

 わけが分からない。どうしていきなり……。

 触れては離れるキスを何度も繰り返され、次第に強張っていた身体から力が抜けていく。

 腰が抜けそうになって、すぐそばにあるジャケットを掴んだ。それが合図だったかのように大きい手が腰に回り、身体をぐっと引き寄せられる。

 角度を変えたキスが深くなり、唇をこじ開けられて舌が侵入してきた。

 もうなにも考えられない。

 キスがこんなにも気持ちよくて、心も身体も溶かしてしまうものだなんて知らなかった。
< 82 / 180 >

この作品をシェア

pagetop