旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 名残惜しげに唇が離れると、すぐに大きく空気を吸う。息を止めていたこともあるけど、それとは関係なしに動悸が激しくなっている。

 成暁さんが濡れた唇を親指の腹でぐいっと拭き取ったのを見てしまい、また胸が大きく鳴った。

「ごめん。我慢できなかった」

「なんですか……それ」

 成暁さんにとっては、キスなんて挨拶を交わすのと同じくらい簡単な行為なのかもしれないけど、私は違う。

「嫌だった?」

 聞いてくる顔は、本気で心配しているようには見えない。まんざらでもなかっただろう?と言われているようだった。

 その通りだから反論できない。

 もしかして、私の気持ちに気づいてる?

 だとしてもキスをしたいなんて思っていない。ただ、知りたいと思っただけ。気持ちいいって思ってしまったけど、本当にそうなの。

 私の返事を待つ、どこかまだ熱っぽい瞳に吸い込まれそうになる。
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