旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
ダメだ。これ以上ここにいてはいけない。
逃げるように彼と距離を取った時だった。
「香澄」
「……はい?」
「好きだ」
心の奥底にまで響くような声に、身体が痺れたような感覚に陥った。
動きを止めて成暁さんを見つめる。
すると、じりっと間合いを詰めてきたので飛び跳ねるようにして後退りした。
「失礼します!」
一度も振り返らずに小走りで家の中に入る。リビングにいるであろう叔父さんと叔母さんの顔を見ることなく、二階の部屋へ駆け込んだ。
ドアを閉めて一人きりになると、どっと疲労感が襲ってくる。
心臓が全力疾走した後のように激しく脈打っている。
「もうっ……なんなのよ……」
上着を脱ぐ気力すらなくて、へなへなと力なくカーペットの上に崩れ落ちた。