旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 どうしよう。嫌な気持ちにさせない断り方ってなんだろう。

「たまには息抜きも必要だよ」

「そうですね……」

 言い淀んでいると、唐突に「すみません」と、別の声が背後から聞こえた。

 肩をビクッと跳ねさせて振り返れば、爽やかな笑顔を浮かべた成暁さんが立っている。

「よかった、まだ残ってて。吉岡さんに確認したいことがあるんだけど、少しいいかな?」

「あ、はい」

 私が頷くと、男性社員は「それじゃあ頑張ってね」と、あっさり引き下がった。

「確認したいことってなんですか?」

 わざわざここまで来るくらいだから、よほど急ぎなのかもしれない。

 そう思ったのに、成暁さんはとぼけた顔をする。

「ん? そんなのないよ」

「え? どういうことですか?」

「珍しく仕事が早く片付いたから、食事に誘おうと思ってさ。メッセージも送ったのに、全然既読にならないし」

「……あ、すみません。携帯電話はこまめにチェックするほうではなくて……」

「うん、そうだろうなぁと思って、会いにきた」

 会いにきた、という台詞に胸をきゅっと掴まれる。

 やだなぁ。絶対顔が赤くなってる。
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