彼と彼女の花いちもんめ~溺愛王子の包囲網~
そして、ライバルは現れる
ひたすら篤樹を避け続ける事3日。
総務部への対応は、問答無用で後輩に押し付けて、メールも電話も一切出ない。
とにかく、冷静になる時間が必要だと思った。
キスしておいて、今更だけど、好きです、と告白する勇気が、まだなかったのだ。
「いいんですかー?先輩、南野さんは、先輩に会いに来てたんですよ、絶対」
「違うから、ただあたしのが慣れてるから、対応してただけだから」
「えーそんな事言って・・南野さん、気があるのバレバレじゃないですか」
「ほんとに、違うから、トモちゃん、変な勘違いしないで・・・」
ぴしゃりと言い返して、みちるが平静を装ってメールボックスを開く。
と、見慣れないアドレスからメールが届いていた。
宛名を見て、みちるがぎょっとする。
「げっ・・・」
「どうしたんですかー?みちる先輩」
「う・・ううん・・・何でもない・・・」
慌てて首を振って、手早く返信を送るとメールを閉じる。

“差出人・・・管理課:仁科依子”

篤樹とみちるがこうなるきっかけを作った、新入社員からのメールだった。


約束通り、定時を回るとすぐに、本社ビルの前にある森林公園に向かった。
“お話があります”
短い一文だけでは、詳しく分からないが、おそらく彼と自分の事だろうとは予想出来る。
会社近くの入り口から、中に入るとすでに彼女は到着していた。
うっわ・・・ほっそい・・・
以前すれ違った時も思ったが、こうして真正面から見ると、折れそうな程華奢な体型をしている。
モデル並みと言われる抜群のスタイルに、小さな顔。
ぱっちり睫毛に縁どられた潤んだ瞳。
文句なしの美人がそこには居た。
もうやだ・・・すでに帰りたい・・・
話を聞く前から白旗を上げたくなる。
「あの・・・仁科さん・・・」
お互い仁科なので、違和感があるが仕方ない。
みちるの呼びかけに、彼女が頷いて近づいてきた。
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