彼と彼女の花いちもんめ~溺愛王子の包囲網~
彼は意外と意地悪です
晴れて、本物の恋人同士になってから3週間。
篤樹とみちるは順調なお付き合いを続けている。
「飲み物どれにするか決めた?」
ずらりと並んだ陳列棚を前に、難しい顔で立ち尽くすみちるの頭を軽く小突いて篤樹が問う。
コンビニで飲み物を決めるだけなのにもうすでに10分近く経過していた。
「ちょっと待って・・・」
「どれとどれで迷ってる?」
「炭酸と、紅茶」
「どっちも買えば?」
「でも、炭酸ひとりじゃ飲み切れないから」
やっぱり紅茶にしようと伸ばしたみちるの手を、篤樹が掴んだ。
「コーラ?紅茶は?」
「・・・ミルクティ・・・」
「よし」
「え、ちょっと待って、紅茶にするから」
「コーラは、俺が半分飲むよ」
「・・・」
さらりと答えて、篤樹がスナック菓子が入ったカゴにペットボトルを入れてレジに向かう。
立ち尽くすみちるを振り返って、篤樹が呼んだ。
「なに、ぼーっとして」
「えっ、あ、ううん!ほ、ほんとに飲んでくれるの?」
慌てて後を追いながらみちるが尋ねた。
こういう些細な事が嬉しいなんて、どうかしている。
これまで、炭酸はよほど飲みたいときしか買わないようにしていた。
飲み切れずに、残すことになって、最後はただの甘いジュースを飲むことになるからだ。
だけど、これからは・・・
一人じゃなくて、二人、だから。
「っ・・・!」
頭に浮かんだ単語に、一人で赤面していると、レジを終えた篤樹が怪訝な顔を向けてきた。
「なに赤くなってんの」
「な、なんでもない!あ、お金!」
「いいよ」
「・・・じゃあ、持つ」
手を差し出すと、篤樹がその手を握って笑う。
「ひとりで何やらしいこと考えてたんだか」 
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