彼と彼女の花いちもんめ~溺愛王子の包囲網~
まさかの連絡
「みちる先輩」
翌日、倉庫で届いた備品の納品作業をしていると、フロアで仕事をしていた後輩に呼ばれた。
「なにーどうしたのー?分かんない事あったー?」
「違います、先輩の事呼んでるんです」
「課長がー?急ぎじゃないなら後にしてって・・・」
山積みのA4のコピー用紙を抱えながら返すと、後輩が倉庫に駆け込んできた。
「課長じゃないですよ!営業部の南野さんです!」
「ええっ?」
思わず大きな声を返してしまった。
もしかして、心配になって昨日の事を口止めしに来たのだろうか?
黙っておくと伝えた筈なのに・・・
「とにかく、急いでくださいっ!先輩に用事だって・・・」
「用事って・・・わ、わかったから・・」
頬を赤くして急かす後輩に、追い立てられるように倉庫から出る。
コピー用紙を持ったままでフロアに戻ると、篤樹がこちらを見て軽く微笑んだ。
後輩が照れたように俯いて、自分の席に戻っていく。
「あの・・・何か?」
昨日の、とは言えないので敢えて誤魔化すと、篤樹が苦笑交じりで頷いた。
「色々、気を遣わせてすみません」
「あ、いえ・・お気遣いなく」
何と答えていいか分からずに答えると、篤樹が茶封筒を差し出した。
「この前、お願いしてた、販促品の発注数、ちょっと変更が出来たんで」
「え、そうなんですか?昨日仕入れ先に、発注かけたとこなんですけど」
今から数量訂正が可能か、すぐに確認しなければならない。
「詳しい内容は、書類に書いてあるんで、すぐに見てもらえるかな?」
「分かりました、確認します」
「お願います」
丁寧に答えた蒼騎が、フロアを出て行く。
なんだ、仕事の話だったのかと、ほっと胸を撫で下ろす。
みちるが小さく安堵の溜息を吐くと、背後の机からのんきな後輩の声が聞こえた。
「やっぱり、かっこいいですよねー!営業部のイケメン三銃士!あたしは、硬派な杉本さんも、軽いノリの柿谷さんも好きですけど、気さくな南野さんが一番好きです!」
「イケメン三銃士って・・・トモちゃん、そんなアイドルみたいな扱いされてるの、あの人たち」
「そうですよー。同期の間じゃ有名ですもん。営業部と飲み会したい女子多いんです!」
「へー・・・人気者も大変ね」
「うちより密に接点のある商品部と、工程管理部は、三銃士にメール連絡する役を取り合いしてるらしいですよ」
「ふーん」
「もし、飲み会になったら、先輩も行きましょうね!」
意気込んで笑う後輩におざなりな返事を返して、みちるは席に戻った。
社内恋愛なんて面倒だし、自分はああいう華やかな部類と関わりあうタイプではない。
一生縁のない話だと流しつつ、渡された封筒を開ける。
中には書類が一枚だけ入っていた。
書いてあった内容は、発注数の訂正文でもなんでもなく・・・
文章を目で追ったみちるは目を剥いた。
「えっ?」
なにこれ、どういう事?
「どうしたんですかー?」
「いや、うん、大丈夫」
「訂正ヤバそうですか?仕入れ先連絡入れます?」
「あー、いや、大丈夫みたい。うん、こっちで処理するから」
「はーい」
行儀よく返事をした後輩に見られないように、素早く机の引き出しに書類をしまう。
いや、これは即時シュレッダーのほうがいいんじゃないの?
ふと思いとどまって、もう一度文面を確かめる。
そこには、短い手書きの文章。
右上がりの癖のある字が綴る内容は。
“昨日の事、説明させてほしい。連絡下さい”
そのすぐ下には、携帯番号。
説明ってなに?
何も説明してもらう必要はない。
だって、見たままの通りだ。
管理部の美人新入社員が、営業部の人気社員に告白する現場にたまたま居合わせた。
解説なんて一切不要。
これに、何を追加するというのか?
あ、もしかして、付き合うことになったから、みたいな説明とか?
「うーわー・・・意味わかんない」
見られたから、一応言っとこうと思って、的な?
これは、電話して来いって事、だよね・・・
説明はいりません、前も言ったけど、他言もしません、ご心配なく。
すぐに追いかけて行って、そう伝えたい位だが、何と無く、営業部に行くのは気が引けた。
さっき、三銃士の話を聞いたせいかもしれない。
手にしたままの紙を丁寧に折りたたんで、そっとバックにしまう。
こういう面倒な事は、すぐに片づけてしまいたい。
今日、仕事が終わったらすぐに電話をしよう。
それで、今度こそ終わりだ。
頷くと、みちるは再び倉庫に戻った。
翌日、倉庫で届いた備品の納品作業をしていると、フロアで仕事をしていた後輩に呼ばれた。
「なにーどうしたのー?分かんない事あったー?」
「違います、先輩の事呼んでるんです」
「課長がー?急ぎじゃないなら後にしてって・・・」
山積みのA4のコピー用紙を抱えながら返すと、後輩が倉庫に駆け込んできた。
「課長じゃないですよ!営業部の南野さんです!」
「ええっ?」
思わず大きな声を返してしまった。
もしかして、心配になって昨日の事を口止めしに来たのだろうか?
黙っておくと伝えた筈なのに・・・
「とにかく、急いでくださいっ!先輩に用事だって・・・」
「用事って・・・わ、わかったから・・」
頬を赤くして急かす後輩に、追い立てられるように倉庫から出る。
コピー用紙を持ったままでフロアに戻ると、篤樹がこちらを見て軽く微笑んだ。
後輩が照れたように俯いて、自分の席に戻っていく。
「あの・・・何か?」
昨日の、とは言えないので敢えて誤魔化すと、篤樹が苦笑交じりで頷いた。
「色々、気を遣わせてすみません」
「あ、いえ・・お気遣いなく」
何と答えていいか分からずに答えると、篤樹が茶封筒を差し出した。
「この前、お願いしてた、販促品の発注数、ちょっと変更が出来たんで」
「え、そうなんですか?昨日仕入れ先に、発注かけたとこなんですけど」
今から数量訂正が可能か、すぐに確認しなければならない。
「詳しい内容は、書類に書いてあるんで、すぐに見てもらえるかな?」
「分かりました、確認します」
「お願います」
丁寧に答えた蒼騎が、フロアを出て行く。
なんだ、仕事の話だったのかと、ほっと胸を撫で下ろす。
みちるが小さく安堵の溜息を吐くと、背後の机からのんきな後輩の声が聞こえた。
「やっぱり、かっこいいですよねー!営業部のイケメン三銃士!あたしは、硬派な杉本さんも、軽いノリの柿谷さんも好きですけど、気さくな南野さんが一番好きです!」
「イケメン三銃士って・・・トモちゃん、そんなアイドルみたいな扱いされてるの、あの人たち」
「そうですよー。同期の間じゃ有名ですもん。営業部と飲み会したい女子多いんです!」
「へー・・・人気者も大変ね」
「うちより密に接点のある商品部と、工程管理部は、三銃士にメール連絡する役を取り合いしてるらしいですよ」
「ふーん」
「もし、飲み会になったら、先輩も行きましょうね!」
意気込んで笑う後輩におざなりな返事を返して、みちるは席に戻った。
社内恋愛なんて面倒だし、自分はああいう華やかな部類と関わりあうタイプではない。
一生縁のない話だと流しつつ、渡された封筒を開ける。
中には書類が一枚だけ入っていた。
書いてあった内容は、発注数の訂正文でもなんでもなく・・・
文章を目で追ったみちるは目を剥いた。
「えっ?」
なにこれ、どういう事?
「どうしたんですかー?」
「いや、うん、大丈夫」
「訂正ヤバそうですか?仕入れ先連絡入れます?」
「あー、いや、大丈夫みたい。うん、こっちで処理するから」
「はーい」
行儀よく返事をした後輩に見られないように、素早く机の引き出しに書類をしまう。
いや、これは即時シュレッダーのほうがいいんじゃないの?
ふと思いとどまって、もう一度文面を確かめる。
そこには、短い手書きの文章。
右上がりの癖のある字が綴る内容は。
“昨日の事、説明させてほしい。連絡下さい”
そのすぐ下には、携帯番号。
説明ってなに?
何も説明してもらう必要はない。
だって、見たままの通りだ。
管理部の美人新入社員が、営業部の人気社員に告白する現場にたまたま居合わせた。
解説なんて一切不要。
これに、何を追加するというのか?
あ、もしかして、付き合うことになったから、みたいな説明とか?
「うーわー・・・意味わかんない」
見られたから、一応言っとこうと思って、的な?
これは、電話して来いって事、だよね・・・
説明はいりません、前も言ったけど、他言もしません、ご心配なく。
すぐに追いかけて行って、そう伝えたい位だが、何と無く、営業部に行くのは気が引けた。
さっき、三銃士の話を聞いたせいかもしれない。
手にしたままの紙を丁寧に折りたたんで、そっとバックにしまう。
こういう面倒な事は、すぐに片づけてしまいたい。
今日、仕事が終わったらすぐに電話をしよう。
それで、今度こそ終わりだ。
頷くと、みちるは再び倉庫に戻った。