彼と彼女の花いちもんめ~溺愛王子の包囲網~
やっぱり、甘い!!!
彼からかかってくる電話にも、最近になって、少しだけ慣れた。
「明日、朝から名古屋支社直行なんだ」
「日帰り?」
「の、予定。でも、帰りは終電間際になると思う。部長が名古屋の営業部長と同期でさ、毎回飲み会になると、連れ回されるから」
「二次会もあるんでしょ?大変だね」
「キャバクラは行かないから、心配しなくていいよ」
「してないし・・・仕事なら仕方ないでしょ」
そんな事でイチイチ目くじら立てるわけがない。
学生じゃあるまいし。
あっさり答えたみちるの返答が、面白く無かったようで、篤樹が拗ねたように言った。
「嘘でもいいから、怒ってみてよ」
「ええっ?そんなの無理よ!」
即座に言い返したら、篤樹が声を上げて笑った。
「冗談だって、そういう事言えないタイプだって知ってるよ」
「・・・もう、からかうなら電話切るわよ。明日、新幹線早いんでしょ?」
「見送りに来てくれる?」
「営業部の人たちいるのに、無理に決まってるでしょ!」
「別に俺は困らないけど」
「・・・あたしは困る」
まだ、堂々と篤樹の恋人だと言い張れない。
嫌う理由なんて、ひとつも見つかっていないけれど・・・
「無理にとは言わないよ。いい子で留守番してて」
「・・・」
まるで小さい子供に言うようなセリフだ。
篤樹は、みちるが夜十時にコンビニに行くと言えば、ひとりは危ないと心配するし、残業で遅くなると言えば、必ず明るい道を通って帰る様に、と念を押す。
こういう優しい気づかいは、みちるにとってはくすぐったくて、まだ慣れない。
「新幹線って最終?」
「まだ分かんないけど、多分」
「そう・・・気を付けてね」
「うん、帰るとき連絡するから」
「分かった。飲みすぎないでね」
みちるの言葉に、篤樹が嬉しそうに返事をする。
「なーに?」
「いや、最初、みちるに電話した時が嘘みたいだなと思って」
「え?」
「だって、何話したらいいかわかんない!って言ってたんだよ?」
「だから!電話苦手なんだってば!」
沈黙は不安になるし、相手の顔が見えないのも落ち着かない。
気心知れた女友達ならともかく、彼氏となると、余計に身構えてしまう。
しかも相手は、南野篤樹。
さまざまな事情が複雑に絡んで、最初の電話で開口一番にみちるが半泣きで言ったセリフがそれだった。
「もう、忘れて!記憶から抹消して!」
これから先ずっと言われ続けると思うと、死にそうになる。
みちるのセリフに、篤樹が笑いを納めてから飛び切り甘い声で言った。
「絶対忘れない」
「ほんっとにヤダ。嫌いになる」
心底嫌そうに答えると、篤樹が慌てた声音になった。
「そこで、そういう言い方するのずるいぞ」
「じゃあ忘れてよ、あたしの中では無かった事になってんの」
「俺にとっては大事な思い出だよ」
「思い出じゃないし」
「いいだろ、可愛かったし」
「なっ・・・」
いきなり何を言い出すのかとみちるが絶句する。
「緊張して、テンパって、もう切る!って慌ててたなー」
「なんでそんな事まで覚えてんのよ!」
「彼女が初めて電話してくれたから」
楽しそうに篤樹が言った。
“彼女”みちるの事を指す単語に、思わず胸が締め付けられる。
彼女なんだから、彼女で間違ってないんだけど。
なんだか、篤樹が言うと、物凄く特別な感じがするのだ。
そう思う自分も、すでにガッツリ恋愛モードに突入している事に気づいて尚更恥ずかしくなる。
「催促したの・・・篤樹でしょ」
恨めし気に言い返すと、篤樹が悪びれた様子もなく
「電話くれて嬉しかったよ」
と答えた。
「明日、朝から名古屋支社直行なんだ」
「日帰り?」
「の、予定。でも、帰りは終電間際になると思う。部長が名古屋の営業部長と同期でさ、毎回飲み会になると、連れ回されるから」
「二次会もあるんでしょ?大変だね」
「キャバクラは行かないから、心配しなくていいよ」
「してないし・・・仕事なら仕方ないでしょ」
そんな事でイチイチ目くじら立てるわけがない。
学生じゃあるまいし。
あっさり答えたみちるの返答が、面白く無かったようで、篤樹が拗ねたように言った。
「嘘でもいいから、怒ってみてよ」
「ええっ?そんなの無理よ!」
即座に言い返したら、篤樹が声を上げて笑った。
「冗談だって、そういう事言えないタイプだって知ってるよ」
「・・・もう、からかうなら電話切るわよ。明日、新幹線早いんでしょ?」
「見送りに来てくれる?」
「営業部の人たちいるのに、無理に決まってるでしょ!」
「別に俺は困らないけど」
「・・・あたしは困る」
まだ、堂々と篤樹の恋人だと言い張れない。
嫌う理由なんて、ひとつも見つかっていないけれど・・・
「無理にとは言わないよ。いい子で留守番してて」
「・・・」
まるで小さい子供に言うようなセリフだ。
篤樹は、みちるが夜十時にコンビニに行くと言えば、ひとりは危ないと心配するし、残業で遅くなると言えば、必ず明るい道を通って帰る様に、と念を押す。
こういう優しい気づかいは、みちるにとってはくすぐったくて、まだ慣れない。
「新幹線って最終?」
「まだ分かんないけど、多分」
「そう・・・気を付けてね」
「うん、帰るとき連絡するから」
「分かった。飲みすぎないでね」
みちるの言葉に、篤樹が嬉しそうに返事をする。
「なーに?」
「いや、最初、みちるに電話した時が嘘みたいだなと思って」
「え?」
「だって、何話したらいいかわかんない!って言ってたんだよ?」
「だから!電話苦手なんだってば!」
沈黙は不安になるし、相手の顔が見えないのも落ち着かない。
気心知れた女友達ならともかく、彼氏となると、余計に身構えてしまう。
しかも相手は、南野篤樹。
さまざまな事情が複雑に絡んで、最初の電話で開口一番にみちるが半泣きで言ったセリフがそれだった。
「もう、忘れて!記憶から抹消して!」
これから先ずっと言われ続けると思うと、死にそうになる。
みちるのセリフに、篤樹が笑いを納めてから飛び切り甘い声で言った。
「絶対忘れない」
「ほんっとにヤダ。嫌いになる」
心底嫌そうに答えると、篤樹が慌てた声音になった。
「そこで、そういう言い方するのずるいぞ」
「じゃあ忘れてよ、あたしの中では無かった事になってんの」
「俺にとっては大事な思い出だよ」
「思い出じゃないし」
「いいだろ、可愛かったし」
「なっ・・・」
いきなり何を言い出すのかとみちるが絶句する。
「緊張して、テンパって、もう切る!って慌ててたなー」
「なんでそんな事まで覚えてんのよ!」
「彼女が初めて電話してくれたから」
楽しそうに篤樹が言った。
“彼女”みちるの事を指す単語に、思わず胸が締め付けられる。
彼女なんだから、彼女で間違ってないんだけど。
なんだか、篤樹が言うと、物凄く特別な感じがするのだ。
そう思う自分も、すでにガッツリ恋愛モードに突入している事に気づいて尚更恥ずかしくなる。
「催促したの・・・篤樹でしょ」
恨めし気に言い返すと、篤樹が悪びれた様子もなく
「電話くれて嬉しかったよ」
と答えた。