彼と彼女の花いちもんめ~溺愛王子の包囲網~
「だったら・・・」
「そうじゃなくて!あの。あのね・・・篤樹・・・あたしは、篤樹だから、電話じゃなくて、会いたいって思ったの。声聞くだけじゃ、寂しくて、どうしても、会いたくなったの・・・篤樹が、あたしを喜ばせたいっていうように、あたしも、篤樹を喜ばせたい。あたしの事を、もっと・・・好きになってほしいっ」
篤樹が、みちるの手をそっと解いた。
距離を詰めるように、一歩踏み出す。
視線を合わせたままで、見つめるみちるの前髪をそっと撫でた。
指先が額に触れて、みちるがぎゅっと目を瞑る。
暴れ出した心臓の音が、篤樹に聞こえてしまいそうで怖い。
「これからは、遠慮しないでいいよって事?」
「・・・遠慮って何?」
篤樹の声が耳朶を甘くなぞっていく。
震えるみちるのうなじを辿った指が、髪を絡め取った。
「みちるがもう限界って言っても、触るの止めなくてイイってこと?」
「も・・・もう十分触ってる・・・っ」
「まだ触ってない場所、沢山あると思うけど」
茶化すように篤樹が言って、顎に指をかけた。
自然と彼を見上げる事になったみちるが、おずおずと篤樹と視線を合わせる。
「全部、俺のにしていい?」
篤樹の柔らかい声が、みちるの鼓膜を揺さぶった。
今まで聞いたどの声より、一番優しくて、甘ったるい声音。
「っ・・・うん」
目を閉じたら、啄むように篤樹の唇が触れてきた。
触れるだけの優しいキスが何度も繰り返される。
顎に添えられていた指が首筋を通って、後ろ頭をくしゃりと撫でた。
「ん・・・っ・・・っは・・」
覆いかぶさるように、角度を変えて口づけられて、息継ぎしようと唇を開いた途端、舌が入ってきた。
慌てたみちるが、後ろに下がろうとしたが、篤樹の掌が支えるように背中を捕まえて離さない。
遠慮しない、と宣言したとおり、篤樹の舌は、歯列をなぞって、上顎を擽り、動けずにいるみちるの舌先を甘く辿った。
永遠のように感じられる、長くて甘いキスの後、名残惜しそうにみちるの唇を開放すると、篤樹は満足げに微笑んだ。
唇に残ったみちるのグロスをペロリと舐める仕草が、妙に色っぽくて、みちるは視線を泳がせる。
自分の唇を指でなぞれば、殆どグロスは落ちてしまっていた。
キスの酔いに浸りそうになるみちるの手をそっと包み込んで、篤樹が問いかける。
「明日の朝、送っていけばいい?」
さっきまでの甘い雰囲気そのままの声。
みちるは満面の笑みで頷きかけて、思いとどまった。
「明日?」
「着替え持ってきてないでだろ?」
そのまま出勤するならいいけど、と言われて、みちるは首を傾げる。
「もうすぐ帰るし」
「・・・何言ってる」
途端、篤樹がみちるの額を指で弾いた。
「えっ!痛っ!なんでよ!」
「一分で発言撤回する気か?」
「撤回もなにも・・・」
今日は、自分の気持ちを伝えるためだけに来たのだ。
これからは、ふたりで向き合って、歩み寄って行こうね。
意思表明のつもりだった。
が、篤樹は胡乱な眼差しでみちるを見下ろして来る。
「ここまで来て帰るとか、無いから」
「いや、帰るから!」
「駄目」
「駄目って何よ!」
「キスだけで帰せない」
「っ・・!」
迷った一瞬の隙をついて、キスされた。
逃げようと思うのに、体がついて行かない。
篤樹の手がみちるの指先を絡め取る。
「俺のものにしていいって言っただろ」
「それは・・・そのうちって・・・意味で」
キスの合間に詰られて、みちるは必死に言い返す。
自分の気持ちを伝えることでいっぱいいっぱいで、その先の事なんて、とてもじゃないが考えられない。
全く考えなかったわけじゃないし、勿論、その先の事も想像はする。
でも、それは今夜じゃなかった。
「そのうちっていつ?明日?明後日?」
畳みかけるように問われて、ますますみちるは何も言えなくなる。
「迷えば迷うほど頑なになる癖に」
見透かしたようなセリフに、黙り込むしかなくなってしまう。
篤樹の指は、一歩も譲らないといった様子で、しっかりとみちるの手を繋ぎとめる。
「・・・」
「みちる・・・一緒に帰ろう?」
許しを請うような、篤樹の切実な言葉。
明日と言えば、きっと明日が怖くなる。
先延ばしにしても、不安は増えるばかりできっと何も変わらない。
今、この手を振りほどいて、あたし、帰れるの・・・?
繋がれたままの手を見下ろして、みちるは唇を引き結ぶ。
このぬくもりが、一瞬でも欲しくなかった、なんて、言えない。
「・・・ん。連れてって」
決死の覚悟で答えると、篤樹の何度目かのキスが、みちるの頬に落ちた
「そうじゃなくて!あの。あのね・・・篤樹・・・あたしは、篤樹だから、電話じゃなくて、会いたいって思ったの。声聞くだけじゃ、寂しくて、どうしても、会いたくなったの・・・篤樹が、あたしを喜ばせたいっていうように、あたしも、篤樹を喜ばせたい。あたしの事を、もっと・・・好きになってほしいっ」
篤樹が、みちるの手をそっと解いた。
距離を詰めるように、一歩踏み出す。
視線を合わせたままで、見つめるみちるの前髪をそっと撫でた。
指先が額に触れて、みちるがぎゅっと目を瞑る。
暴れ出した心臓の音が、篤樹に聞こえてしまいそうで怖い。
「これからは、遠慮しないでいいよって事?」
「・・・遠慮って何?」
篤樹の声が耳朶を甘くなぞっていく。
震えるみちるのうなじを辿った指が、髪を絡め取った。
「みちるがもう限界って言っても、触るの止めなくてイイってこと?」
「も・・・もう十分触ってる・・・っ」
「まだ触ってない場所、沢山あると思うけど」
茶化すように篤樹が言って、顎に指をかけた。
自然と彼を見上げる事になったみちるが、おずおずと篤樹と視線を合わせる。
「全部、俺のにしていい?」
篤樹の柔らかい声が、みちるの鼓膜を揺さぶった。
今まで聞いたどの声より、一番優しくて、甘ったるい声音。
「っ・・・うん」
目を閉じたら、啄むように篤樹の唇が触れてきた。
触れるだけの優しいキスが何度も繰り返される。
顎に添えられていた指が首筋を通って、後ろ頭をくしゃりと撫でた。
「ん・・・っ・・・っは・・」
覆いかぶさるように、角度を変えて口づけられて、息継ぎしようと唇を開いた途端、舌が入ってきた。
慌てたみちるが、後ろに下がろうとしたが、篤樹の掌が支えるように背中を捕まえて離さない。
遠慮しない、と宣言したとおり、篤樹の舌は、歯列をなぞって、上顎を擽り、動けずにいるみちるの舌先を甘く辿った。
永遠のように感じられる、長くて甘いキスの後、名残惜しそうにみちるの唇を開放すると、篤樹は満足げに微笑んだ。
唇に残ったみちるのグロスをペロリと舐める仕草が、妙に色っぽくて、みちるは視線を泳がせる。
自分の唇を指でなぞれば、殆どグロスは落ちてしまっていた。
キスの酔いに浸りそうになるみちるの手をそっと包み込んで、篤樹が問いかける。
「明日の朝、送っていけばいい?」
さっきまでの甘い雰囲気そのままの声。
みちるは満面の笑みで頷きかけて、思いとどまった。
「明日?」
「着替え持ってきてないでだろ?」
そのまま出勤するならいいけど、と言われて、みちるは首を傾げる。
「もうすぐ帰るし」
「・・・何言ってる」
途端、篤樹がみちるの額を指で弾いた。
「えっ!痛っ!なんでよ!」
「一分で発言撤回する気か?」
「撤回もなにも・・・」
今日は、自分の気持ちを伝えるためだけに来たのだ。
これからは、ふたりで向き合って、歩み寄って行こうね。
意思表明のつもりだった。
が、篤樹は胡乱な眼差しでみちるを見下ろして来る。
「ここまで来て帰るとか、無いから」
「いや、帰るから!」
「駄目」
「駄目って何よ!」
「キスだけで帰せない」
「っ・・!」
迷った一瞬の隙をついて、キスされた。
逃げようと思うのに、体がついて行かない。
篤樹の手がみちるの指先を絡め取る。
「俺のものにしていいって言っただろ」
「それは・・・そのうちって・・・意味で」
キスの合間に詰られて、みちるは必死に言い返す。
自分の気持ちを伝えることでいっぱいいっぱいで、その先の事なんて、とてもじゃないが考えられない。
全く考えなかったわけじゃないし、勿論、その先の事も想像はする。
でも、それは今夜じゃなかった。
「そのうちっていつ?明日?明後日?」
畳みかけるように問われて、ますますみちるは何も言えなくなる。
「迷えば迷うほど頑なになる癖に」
見透かしたようなセリフに、黙り込むしかなくなってしまう。
篤樹の指は、一歩も譲らないといった様子で、しっかりとみちるの手を繋ぎとめる。
「・・・」
「みちる・・・一緒に帰ろう?」
許しを請うような、篤樹の切実な言葉。
明日と言えば、きっと明日が怖くなる。
先延ばしにしても、不安は増えるばかりできっと何も変わらない。
今、この手を振りほどいて、あたし、帰れるの・・・?
繋がれたままの手を見下ろして、みちるは唇を引き結ぶ。
このぬくもりが、一瞬でも欲しくなかった、なんて、言えない。
「・・・ん。連れてって」
決死の覚悟で答えると、篤樹の何度目かのキスが、みちるの頬に落ちた